今回はフィッシングレポートではありません。
既製品ではなく自分だけの調子、仕上げなどオーダーメイドで和竿(竹竿)を
竿師に注文して作らせることを別誂え(べつあつらえ、べっちょう)などと呼びますが
船づり館ではどのようにして別誂え竿を制作していくかその過程というか手順というか
ご紹介していきたいと思います。
これを読んでいただき自分だけの竿を作り出し
自分だけの魚とのアプローチを楽しむ事ができれば
今まで (釣れる=楽しい、釣れない=つまらない等) とは違った
釣りの世界が広がる事でしょう。

それではあくまで一例としてご紹介します。
昨年の12月、ご来店されたお客様より鯊中通し竿についてのご相談を受けました。
当店の特注和竿、正勇作総矢竹鯊中通し竿を愛用されています。


写真の竿は以前私が誂えた一対の総矢竹の鯊中通し竿です。
鯊を釣る為に最も重要な誘い動作、つまり小突き動作を8Mを超える深場で正確にできるよう
竿師正勇さんに特注した竿です。私が実釣で使ってみて調子も釣果も良好だったので店頭でも
販売を開始しました。鯊竿としては構造が特殊な総矢竹で作られています。

この総矢竹の竿を使い込んだお客様のご相談です。もう少し竿の胴部分で
魚の引き味を楽しめる竿はないか?と言う事でした。
鯊中通し竿には総布袋竹、布袋竹穂先+矢竹、総矢竹と大きく分けて三種類の
竿の構造がありますが釣り味を求めるならば穂先から元竿まで布袋竹を使い
印籠(インロー)継ぎで作るのがお客様の意向を最も満足させることができると考えられます。
鯊の頭を振る独特な引きを竿を持つ手のひらに心地よく響かせ太さの割に可動範囲の広い胴部分が
釣り味を更に高める事が可能なはずです。
しかし釣り味は今まで以上のものができても魚からのアタリを出すための小突きが
できるかどうかが重要な問題です。
水深のある深場で穂先にオモリを小突く力強さがある総布袋竹印籠継の鯊竿は
作れるのか以前竿師に尋ねた事がありましたが布袋竹では適合する材料が
なかなか見当たらないとのことでした。上質な素材の竹でなければできない竿です。
竿師も上質な材料を切断して竿の形にしてからこの調子では駄目と言われてしまうと
その材料が無駄になってしまうので切り組む前に竹を選びに私に来てくれないかと言って
きました。お客様からは私が材料を選んで来るということで小突き動作ができる
ケタハゼ用の中通し竿九尺を
印籠継の一対でご注文いただきました!

まず作りたい竿の簡単な絵と調子等を書き込んだ仕様書を竿師に送り綿密な打ち合わせをします。

ある程度の材料の洗い出しをあらかじめおこなっておいてから私と竹を選ぶ事にしました。
さて年が明けて今年の1月13日(月)に休日を利用して竿師正勇さんの仕事場におじゃましました。


とても広い仕事場です。タナゴか小ブナ用と思える竿に取り組んでいました。
早速材料の竹を出してくれました。

こんなにたくさんあります。私が竿の調子を具体的にオモリを下げて示すと
材料の先端を切ることになり注文の竿の長さ九尺より短くなってしまう為更にたくさんの竹を
出して来てくれました。さあ!ここからが勝負です。
正勇さんがある程度の調子を振り分けながら私がオモリを下げて調子を確認、
穂先の位置に印を付けます。ご注文が一対なので更に二本の竿の調子、
竹の節が揃わないといけません。一本、一本は良い調子なのですが
二本共同じ調子、更に竹の節も揃えるとなるとこの条件を満たしてくれる一組は
なかなか見つけられません。竿師が私に来てくれと言った意味がよく解りました。
材料選びは難行しました。15時半ぐらいから作業を始めて19時を過ぎても
まだ決まりません。二組を決めてどちらかお客様に選んでいただく
予定でいましたが考えが甘かったです。
それでも少しの妥協はありますがなんとか二組選び出してこの仮継から
選んで頂こうと言うところまでこぎつけました。
やれやれやっと決まったと思ったら正勇さんが二組の内から一本ずつ取り上げ
「これ、うまくいくんじゃないの?…」…ナント驚いた事に全くの偶然ですが
二組の中から選んだ一本ずつが調子もほぼ一緒、節も揃って理想的な一組ができました。

これでいきます!二本の節が揃っているのがわかりますでしょうか。
このまだ曲がっている竹が竿師の手にかかるとシャッキっと見違えるような
竿に変わってしまうのですから竿師の技術力には驚くばかりです。
仮継ぎができた時点でお客様に見ていただき了解を取り仕上げに入ります。
4月下旬、正勇さんから別誂え竿の仮継ぎができたので取りに来て欲しいと
連絡があったので4月27日(水)の休日を利用して3ヶ月ぶりに再び正勇さんの仕事場を
訪れました。(長くなってしまったので続きはまた来週…)
【サンスイ船づり館】
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